
嵐を呼ぶJR小海線!!
小淵沢駅でJR中央本線からJR小海線(*001)に乗りかえる。このJR小海線が、これまたとんでもなくローカルで、1日の運行本数が14本・・・。
なので乗り換えに1時間ぐらい空きが出来る。しかし丁度お昼時なので、お弁当を食べるのにはいい。
よろしくないのは乗り換えの対応にあたる駅員の一人。まったく業務を行うに当たって砕けすぎた態度が目に付いた。
二人組みで乗り換えのための臨時改札で清算業務を行っていたのだが、一人は鉄道マンらしい誠実感溢れる対応。しかしその横に立つもう一人が、相棒にはちぐはぐな存在だった。
その50歳くらいの駅員にはまったく緊張感が無く、ズボンのポケットに両手を突っ込み、にやにやして柵に寄りかかって片足を預けている。来る客来る客を勝手な妄想で楽しんでいる感じ。ひなびたところの駅員業務に慣れた悪い例が、ここにあった。
まぁそんなことを感じながら、乗り換えの清算を済ますと去年も食べた駅そばを食べることに。
とりたてて美味しいというわけでもないのだけど、高原気候のすがすがしさが満ちる空気の中で食べるそばやうどんはやはり格別で、多くの観光客を惹きつけていた。
僕は月見そば、妻は月見うどんを。各310円。残念なことに、ここらあたりの名物になるような美味しそうな駅弁はなかった。ぜひゴールデンで豪華で盛りだくさんで合成保存料&着色料なしで、500円ぐらいのささやかなつつましい駅弁を開発して頂けたらと切に願う次第である。
小淵沢駅でJR中央本線からJR小海線に乗りかえる。このJR小海線が、これまたとんでもなくローカルで、1日の運行本数が14本・・・。
さて駅そばを食べた後は、小海線のホームで、さっそく停車中の列車内に乗り込んだ。
観光気分をちょっとくすぐられる雰囲気になる列車内だった。
この列車はワンマンとの表示があった。きっと車掌が一升瓶を振りかざしながら赤い顔でべらんめぇ口調で、客にからみつつシバきあげちゃうんだろうなぁ・・・な、わけはなく、ワンマンとはつまり車掌さんはおらず運転士一人で運行される列車を意味する。ほーっ、よかった。
そしてこの列車で出発してしばらくすると、学校のストーブのような匂いが漂うことがあった。エンジン音もいつもの列車と違うような。
石油かガソリンで動いているんですな。
この小海線の列車は、路線がとってもでローカルでのんきなんだけど、この2007年夏に世界初のハイブリットシステムを導入しちゃった新型車両キハE200形を導入するというから驚き!ウソッ、電車マニアでないから驚かない。
ともあれ僕としては地球とお客にやさしい、間違っても横柄な駅員を置くにしのびないようなエコロジーな列車運行を望みますな!
こうしてお昼からの山梨県北杜市から長野県小諸市を結ぶ、小海線:全長78.9km(駅数31駅)の旅は始まった。
小淵沢駅を出発すると高原列車の名にふさわしい、松と白樺の木立がすぐに見え始める。天気は曇ったり晴れたりを繰り返しながらも、どちらかといえば曇り勝ち。
そしてその向こうに庶民のあこがれの別荘が。あぁ、広がっていく無限の妄想・・・。
あの別荘のテラスデッキでウッドチェアに座りながら、ゲージのセーターを着てパイプなんかくゆらせちゃったりする僕・・・。でも馴れないものだからすぐにむせて気持ち悪くなり、気を取り直しワインを飲んだら、おしゃれな壜のお酢(*002)だったりして、さらにゴホッゴエボォーとむせまくり、飼っている、これまた別荘地を象徴するようなゴールデンレトリバーに八つ当たりしたら噛みつかれ、慌てて噛み付かれた手を振り飛ばしたら、パイプが吹っ飛んで、その火が別荘に引火して盛大なキャンプファイヤーになり観光客は激しく大喜び・・・。
ち、ちがうぞ!なんだか、激しく違うぞ!どうしてか、そう被虐的になるのは、常日頃より敬っているセレブ神(ナンデスカ、ソレハ?!)への信仰が足りないからだ。ねぇ、デビー夫人。
思い起こすに去年は、同じ日に小淵沢駅を出発して2つ目の甲斐大泉駅で降りて、ペンション(*003)に泊まったのだ。
去年は大満足だったが、今回のペンションはセレブかなぁ?なんていったって、プリンセスだからなぁ。軽井沢ド真ん中だからなぁ。1人4900円(税込み&はかなげな希望込み)だからなぁ。・・・不安になってきた。
清里駅前を通過。高原気候ならではの不順とデジカメが古いのとで、どうしても写真の画面がかぶりがちになってしまう・・・。
これがあの清里かぁ。と、思った瞬間、駅前のバランスの取れない、形だけは欧米風の建物の連なりに、気持ち悪さを覚える。
悪趣味なカラフルな服がやたらと店前に出してある古着屋さん(?)も、ちまちまとしたデザイン・バランスの悪さに盛大に強力している。(*004)
駅前のいかにも観光地ですよ♪といった建物の連なりは、形だけ欧米風の別荘地をイメージして建物にしただけといった感じで、さらに手入れの仕方もやっぱり欧米とは違うのでうらぶれて見えるのは否めない。
駅に降りず、僅かな停車時間で、駅前の様子から、そんな風に感じてしまった僕は、清里の観光へのボルテージがかなり下がった。
バブルの時ならまだしも、いまのバルブの壊れたような経済社会の中で、清里というネームバリューだけでやっていけるものかしら。
もっとも駅以外のところに、それはそれは雰囲気のいい素適なお店や木立があるのだろうけど。
空模様がはなはだ芳しくなく、曇り空が続く。
野辺山駅は、JR駅の中でも最も高い、標高1345mに位置し大きな碑が立っている。いつもより1300m高いところで呼吸しているわけだが、これくらいの標高ではいつもと変わりはないらしい。
周りの景色は北海道の畑を思わせるほど、広大な農地が広がっていた。
また野辺山といえばシャッターシャンスを逃してしまったが、野辺山宇宙電波観測所があって、列車内から口径45mの電波望遠鏡という波長が数ミリの電波「ミリ波」を観測する電波望遠鏡としては世界最大の、農地の中にあってなんだかウソっぽいSFを思わせる大アンテナが見えた。
馬流駅(まながしえき)の辺りから、とうとうポツリポツリと雨が降り始めてきた。高原特有なのか、まだ昼の1時というのに、日暮れのような雰囲気の中、列車は進んだ。
そして次の高岩駅ぐらいから、本格的に雨模様(*005)になり、全国的に脳天気なゴールデンウィーク初日の気分を重いものにしてくれた。これがほんとに水を差すというやつである。
圧倒的に激しくとめどもないほどの晴れ男である僕は、負けるもんか!と思った。天気とどう勝負するのか定かではないが、とにかくそう思った。
車窓に叩きつけられる雨は、この世に晴れたときなんかあるのかと思わせるぐらいの勢いだったので、この後展開されるいい旅ゆめ気分な軽井沢旅行を雨風の中を強行するのかと思うと、もはやゴールデンな輝きがしぼんでいくようだった・・・。
龍岡場駅では、どっと女子高生(*006)が乗り込んで来た。そう!観光気分で乗った観光列車は、いつのまにか普段の人たちが使う通学・通勤列車となっていたのだ。
適当にいた観光客も随分と存在感を薄くし、その分女子高生の365日お祭り(それもかなり激しいやつ)が爆発していた。それはもう「手すりによじ登らないでください!」とアナウンスしたくなるぐらいの騒ぎで、見上げた先の吊革に彼女達が持って入ってきた傘がぶらぶらと揺れていた。
写真の中込駅につくと彼女達の2、3人がわずかな停車時間にホームでずぶぬれになった体を踊りくねらせて、傘を振り回し水しぶきを跳ね散らせていた。その向こうに、なんていうのでしょうか、昔のテーマパークに良くあった顔をハメて看板に描かれてある絵で写真をとるものが、駅員が魚を持つというモチーフで間抜けに佇んでいた。
あれが出来たとき、彼女達もかなり喜んで、顔をはめ込んで携帯写メしたに違いないことは間違いない。
恋の激戦区を生きる彼女達のはじけぶりに、オジサンの僕も若返りそうだよ。
おかげで雨ぐらいでブルーになっていたくだらなさがふっとんだよ、ありがとう。
しかしそんな中で革のトランクを網棚に上げて、悠然と旅情に浸っていた僕たちが随分と場違いな感じがする始末・・・。
そうなんだけど・・・。
僕たちはこの地にあって異邦人で、彼女達には単なる日常の通学の場でしかないわけだから・・・。
しかし思った・・・。
さまざなな職にあって、教師だけにはなっていけないと・・・。この動物園と化したような列車内で、どうしようもなく萌えまくっちゃってる彼女たちに自分が思っている正論を共感してくれなくてもいいので理解してもらおうと考えるのは、東大に入って首席で卒業し、メジャーリーグで4番を打って、チームをワールドシリーズに優勝させ、ブロンドのハリウッド女優とアっちっちの関係になるぐらい難しいことなのだ。
この例えは、僕の希望ではないですよ、えぇ。あくまで例えですから、えぇえぇ。
やっと女子高生が少なくなって静かになったころ、目に飛び込んできた「おとめ」の文字。気がつくと思わずデジカメのシャッターを押していた!
すごい名前の駅だ!シンプルでローカル感たっぷりで、このごろのモダンさいっぱいのネーミングをまったく無視し、あまつさえこの駅周辺に住む男の立場(*007)はどうするんだ!といった感じのインパクトだ。
しかもこの地で最初に見たおとめがさっきの女子高生なので、語彙を完全に裏切っている。
そんな荒れに荒れた小海線で、最後のディープインパクトを受けつつ、終点小諸駅に着き、小海線の旅は終わった。
空を見上げると、いつの間にか雨は上がっていた。
見上げる僕と妻の顔には自然と笑みが浮かび、僕は勢いよくトランクカートを引いて、改札に向かった。
