
JR中央本線 八王子駅〜小淵沢駅間の車窓から
東京の八王子駅から、長い長いJR中央本線に乗り込むと、いよいよ旅に出たんだという気分になる。(*001)
高尾を過ぎると、緑の山々が景色の中に多くなってくる。
とある駅で和服を着た女性が乗車してきた。
桜色の和服に、髪型だけはモダンにショートカットで、その奥ゆかしいたたずまいには、ローカルなJR中央本線が似合う。
こういう組み合わせを見ると、なにらかしらのストーリーを勝手に感じてしまう。とても詩的な想像が、流れる車窓の景色の中にあって、なぜかそこだけ時を止めているかのようだ。
車窓からの眺めは、どんどん自然の景観が深くなり、緑の木々が眩しい。
窓辺には、旅のお供の定番のお茶とコーヒー。
関東もちょっと都市近郊を奥へ行けば、こんなに手付かずの自然に満ち満ちている。
どれだけ、人口が一極集中しているんですかいっ!ってことですな。眺めていると、目の網膜が、すぐに * ま緑 * になりそうなほど、新緑に満ち満ち満ち満ちていた。
ゴールデンウィーク初日だからなのか、こんなローカルな選択肢で観光に行く人が少ないのか、JR中央本線が廃れてきているのか、多分どれも正解だと思うが、列車内はガラガラに空いていて、非常に旅情にほどよく浸りながら時間を過ごすことができた。
しかしその少ない乗客の中で嫌が上にでも、目に止まってしまうのが、おじさんたちである。
向かいの座席に足を乗せ、スポーツ新聞を読む。
テレビで見る「世界の車窓から」などでは、まったく見られない醜態だ。100歩譲って、同年代の外人のおやじが同じことをしたとしても、こんなに「オヤジ」的な感じにならず、それなりに様になっているように思わせる。ちなみに僕は、職場のガスチェアに片足だけヨガのごとく、上げている人も駄目だ。
一年ぶりに山梨県に入り、勝沼ぶどう郷駅あたりから、その名前が示す通り、ブドウ畑が一面に広がりを見せていた。
堅い樹から、あんなにジューシーでたわわに果実が実るのは、よくよく考えると不思議なことなのだが、ブドウの樹はことさらしなびて見えて、それでも毎年見事なみずみずしいブドウをを実らせるのだから、いい仕事してますよ、まったく。遠くアルプスを思わせる山々が見え始め、霞に覆われていた。
途中、山梨市駅で急行の通過待ちのため停車。ホームの椅子には、ボランティアのみなさんによる座布団が春らしい柄のもので設置されていた。後で調べてみると手芸サークルのみなさんによるものだとか。
こういう地元で有志による心づくしというものが、まったくもって珍しい世の中になってしまった。
僕の頭の中でも、いつのまにか何かに対し全ての対価を考えるつまらない自動計算機が常に働いている。
こんなに影でよく動く計算機なのに、数字は苦手で、簡単な暗算でも2ケタ以上は、迷わず電卓をたたく僕。
AM10:05分。
石和温泉駅あたりから、NHKのドラマ放送に連動した販促活動なのだろう、「風林火山」ののぼりがやたらと目立つ。
それを見て妻が、
[妻] 伊達政宗だっけ?(*002)
[僕] ・・・・。
[妻] ?????
[僕] かなり武田信玄。
妻よ!外に出て、山梨は甲斐のみなさんに言っておあげなさい。
妻は山梨県全域を敵にする!!!
日野春駅と長坂駅の間を通過中に、菜の花畑が広がっていた。この辺りから天気が除々に曇ったり晴れたりといった、怪しい空模様になり、ちょっと心配・・・。
せっかくの菜の花畑もちょっと色彩に欠ける。デジカメの画像で見るとなおさらで、ほんとは、ほんとは、とっても牧歌的な景色なのよ♪
この菜の花畑は、モウモウ牧場とよばれる山梨県立酪農試験場をはじめとする多くの牧場で、牛たちの飼料となるトウモロコシを栽培されているのだが、菜の花はそのための肥料になるのだとか。
つまり飼料の肥料というわけで、この広大に広がる菜の花は、ゴールデンウィークの終りにあっさり刈り取られ、今度はトウモロコシ畑になるようだ。
JR中央本線の旅も終りに近づき、JR小海線乗り換えの小淵沢駅に近づく。
いま天下のゴールデンウィークだよねっ。。。旅行シーズンど真中だよねっ。。。と、周りの人に聞いて回りたくなるぐらい、列車内はがら空き状態。
でもほんとに聞いて回ろうにも、人いない・・・。
もうこの辺りから、ちょっと観光地の雰囲気が漂いはじめ、おまけに清里のある小海線の乗り換えポイントなのに、人いなさすぎ・・・。
がたがた揺られるのどかな列車内をそんな思いで見つめると、ちょっとミステリートレインで、浮世から離れてしまったような気分にある。
普段からかなり浮世離れしちゃってる思考回路を持つ僕(*003)は、磁石の同極同士が反発しあうかのように、ちょっと違和感を覚える。
大丈夫か?JR中央本線!この観光シーズンにこれは・・・、といいつつ、がやがやとうるさい列車内がよりは、特に旅をする場合とっても好ましい状態であるので、すぐに旅情に浸れる環境が気持ちいい。
行きたいかどうかは別として、みなさん、穴場ですよ、コレは。
日本アルプスの山々には、霞がかかっていて、去年よりはっきり見えない。耳の鼓膜がキーンとするたびに、標高を上げているのがわかる。
空気も高原のすがすがしさをどことなく感じさせるものになってきた。
そうして想定していたより早く、昼前に小海線乗り換えの小淵沢駅に着いた。
